カメラマンと山小屋はよく似合う
第二章

− 優しい写真 −

それからの四日間は、正に怒涛のようだった。家族や親戚に連絡を入れ、年明けで仕事が忙しい父の代わりに、私がお葬式の手続きを全てやった。

葬儀をおばあちゃん家でするために、家の中を掃除したり座布団を干したり、お弁当の手配や火葬場への連絡、しなければいけない事は山ほどあった。

昼間ばたばたと動き回って、夜は倒れ込むように眠りにつく。

そして朝起きた瞬間に、おばあちゃんを思って泣くのだった。




***

ロッジには、深夜二時を過ぎたというのに未だ明かりが点いていた。こんな時間に押しかけてくるたった一度会っただけの女を、彼は一体どう思うだろうか。

雪がしんしんと降り続け、傘もささずに出てきた喪服姿の私の肩や頭にいくつも落ちた。
視界に映ったバルコニーは真っ白で、その下に溜まる雑草や落ち葉を綺麗に隠しているけれど、きっと明日の朝には、いくらか溶けてしまうだろう。


……今の、私のようだと思った。

悲しみをいくら別の感情で隠しても、それは消化される事なく確かにそこに有り、そしてふとした瞬間に現れる。私が馬鹿みたいに動き回ったところで、それはあの雪と同じ事。する事が無くなってしまえば、雪が溶けてしまえば、残るのは隠されていた落ち葉という悲しみだけ。


コツコツと拳で叩いた木の扉はすぐに開いた。長めの前髪から覗く瞳が、私を捉えて僅かに揺れる。

「たか、とうさん。こんばんは」

「……ああ、お疲れさん」

湿った髪を梳くように、頭に積もった雪を払う優しいその指先だけで、私はこの場に崩れ落ちてしまいそうだった。

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