カメラマンと山小屋はよく似合う
「いつきさん最近、全然わたしの事撮ってくれないじゃないですか」

「俺はフリーのカメラマンで、ノルズの契約は終わってんだよ」

「でも、それでも今まではたまに来てくれてたでしょ? わたし、いつきさんに撮ってもらう写真が一番評判良いんですよ」

「誰に撮られても一番良い表情してみせろ。お前プロだろう」

「そうですけどぉ、そうじゃなくってぇ」

どう考えても痴話喧嘩にしか見えないんですけど……。完ぺきなる置いてけぼりをくらって吐くはずだった溜め息は、何故か口元がひくりと上ずっただけで止まった。何だかちょっぴり嫌な気分になったのは、ただ単にかまってくれる人がかまってくれなくなったからだと思う。親を取られたような、そんな気持ち。

「あ、あの!」

未だ痴話喧嘩を続ける2人に、私は高東さんの服の袖を引っ張った。

「駐車場の時間、やばくないですか?」

ここのショッピングモールは4時間過ぎると料金がかかってしまう。本当はまだ1時間くらい余裕があるけれど、高東さんも帰りたいようだし助け舟を出したって良いだろう。

「あ、ああ。そうだな。急ごう」

「えー!」

「じゃあな、楠木」

渋る彼女を置いて、高東さんはビニール袋と一緒に私の手を引っ張った。一応お辞儀はしたけれど、彼女には高東さんしか見えてはいないようだった。
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