カメラマンと山小屋はよく似合う
「っああ!ノルズの楠木れな!……さん!」

慌てて口を抑えるけれどもう遅い。彼女はいま私に気付きましたというような顔をして。

「……いつきさん、妹さんがいらしたんですか?」

「あー。まあ、そんなとこだ」

「そんなとこ? 妹さんではないってこと?」

軽く突き出した唇はぷるぷるで、そこに当てた人差し指にはブルーのネイル。頭の先からつま先まで、全てが作り物のように美しい。それも当然、ノルズは20代前半の女性を対象にしたファッション雑誌で、ノルズが紹介したコーディネートは必ず流行る。そんな雑誌の専属モデルである楠木れなは、最近バラエティ番組にも出演している超期待の新人だ。

「は、初めまして。相田つぐみと言います」

「初めまして、楠木れなです。それで、いつきさんとはどういったお知り合いで?」

「あ、えっと、たかと」

「つぐみ」

私の言葉を遮るように、高東さんが名前を呼んだ。少し説明しにくい関係ではあるけれど、私と高東さんは謂わば只のご近所さんに違いはない。何か言ってはいけない事でもあるのだろうか。こてんと首を傾げて彼を見上げれば、楠木さんも不満そうに彼を見る。

「楠木、悪いけど今はお互いプライベートだろ。俺たちもう行くから」

「えぇ、何でですか? せっかく会えたのに」

「いくら田舎だって言っても、客に気付かれたらパニックになるだろ」

「大丈夫ですよー。別に女優ってわけでもないんだし」

高東さんがどうして彼女を拒絶するのかは分からないけど、彼女は彼女でなかなか強い。カメラを置いてビニール袋を手にした高東さんの腕を、負けじと掴んで軽く揺する。
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