群青色の、空を見上げて。


 佐賀が、わたしから手を離す瞬間に瞳に浮かべた、切ない色。

 それを見たときに、心臓をぎゅっと掴まれたように、胸が苦しくなった。



 佐賀の、温かい手に、ずっと触れていてほしいと思う。
 


 本当は、彼をわたしの欲求のままに抱き締めたい。

 彼を、素直に愛せたら。

 

 佐賀に対するわたしの想いは、悲しいほどに、溢れている。

 
 この想いを、彼にぶつけたら、きっと受け止めてくれるだろう。

 温かく、優しいあの掌で。

 ふわりと、甘い笑顔をして。


 
 でも、わたしにはそれができない。
 
 はっきり言えば、してはいけないのだろう。

 
 
 佐賀といれば、楽しくて、たくさん笑える。
 
 彼が、かけがえのない、大切な存在であることにかわりはない。

 
 
 それでも、わたしのなかの思い出は、簡単には消せない。

 どんなに辛くて、涙があふれ出しても、消したくない。


 
 わたしの愛した人と、作った思い出だから――――。

 

 
 





 
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