marine snow
marine snow
ただただ、あの場所にいたくなかった。
あたしにとって自分の家は、落ち着ける場所じゃなかったから。
父と母の怒鳴り声、お互いを罵り会う声、よく分からない叫び声。
そんな負の感情で渦巻いている。
聞いてるこっちの気が狂いそうになる日々を、あたしは送っている。
少しでも自分を見失わないように、外の音を拾わないように耳を塞いだり、音楽を聞いたりした。
でも、もう、あの空気だけで胃がキリキリして吐きそうになってしまう。
だから………
「ただいま……」
学校から家に戻り、思わず顔を歪める。
それは、玄関にあの人たちの靴があったから。
また、あの声を、あの空気を感じないといけないのかな……
グッと唇を噛み締めて、音をたてないように自分の部屋へ急ぐ。
次第に聞こえてきたあの人たちの声。
二階のあたしの部屋まで聞こえる程の大声は、どんどんヒートアップしていく。