marine snow
『あぁっ、もう……あんな子がいなければアンタと別れられたのに!
あんな子、産むんじゃなかったわ!!』
……分かってた。
二人が、そう思っていたことぐらい。
ずっと、ずっと前から……それでも、諦めていたけど、心のどこかでは期待してたんだ。
その淡い期待も、ガシャンと音をたてて砕け散った。
あたしは耳を塞いで、あの人たちに気づかれないように外へ出た。
行くあてなんか、ない。
でもとにかく、少しでも遠くへ、あの声が届かないところへ……
いるだけで腐ってしまいそうな、あの淀んだ空気から逃げたい。
あの場所に、いたくない……
「はっ、はっ…はぁ……」
ここ、どこだろ……全く分からない。
とりあえず、としばらく歩いてみると見たことのある公園があった。
でもこの公園、あの家からかなり遠くにあったはず。
「あたし、どれぐらい、走ったん、だろ……」