裏道万屋の事情
あたしがそんなことを考えてると、弘さんが口を開く。



「そういえばずっと思ってたんだけど、菜子ちゃんさー嵐くんとどう知り合ったの??突然二人で帰って来たよね。」

『あれ言ってませんでしたっけ??あの日公園で不良に絡まれてる嵐に遭遇して、そこにちょっくら途中参加したんですよ。で、その後夕飯の買い出しに行ったらまた偶然会って、お礼に家まで荷物持ち手伝ってくれて…みたいな感じですかね。』

「へぇ〜。…途中参加…お礼…??ま、まぁ…じゃあ凄い偶然…――いや、これは必然だったんだよね…。」



え??

どういうこと??



「最近の嵐くん、だんだん変わってきてるんだ。良い意味でね。」

『変わってきてる??』

「それは少なからず、菜子ちゃんのおかげなんだよ。」

『…ってか…あたし何かしましたっけ??』



あたしがそう言うと、弘さんはフッとほほ笑んだ。



「強いて言うならば、『出会った』。それが、菜子ちゃんが嵐くんにしてあげたことかな??」

『出会った………??』



それだけで、嵐の何かを変えてあげられた??

この平凡なあたしが??



「菜子ちゃん。」

『えっ??』



打って変わって真剣な表情の弘さん。

弘さんの真っすぐな瞳があたしを見据えている。



「嵐くんの詳しい話…聞いてもらえるかな……??」



弘さんの瞳を見て、深い内容なのだと察する。

…あたしが??

他人であるあたしが、嵐の事情など知ってしまって良いのだろうか――??

深入りして良いのだろうか――??





――なんかよく分かんないけど、菜子には何でも話せちゃうんだ――






ふと、前に嵐が自分の過去を話してくれたときに言った言葉が頭の中をよぎった。






答えはもちろん―――








『ぜひ、聞かせて下さい。』



あたしも弘さんの瞳を真っすぐ見つめ返し、はっきりそう告げた。


こんなあたしを信頼してくれてる嵐の力になりたいから。

…だから、あなたのことをもっと知っていきたいんだ。
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