裏道万屋の事情
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『………ケホッ…ケホッ……んぅ…??』
あたしはゆっくりと目を開ける。
――と、そこには今にもあたしの顔に触れるんじゃないかってくらいどアップの嵐の顔。
『―――っ???!!!』
あたしは声にならない声を上げた。
「あ、気が付いた。」
そう言うと、嵐は涼しい顔であたしから顔を離す。
近すぎ近すぎっ!!!!
嵐ってどういう神経してる訳?!
あたしは慌てて上体を起こし、バクバクと暴れる心臓を押さえる。
「平気??心臓痛い??」
『お前のせいだっての!!!!』
「??」
この鈍感男めっ!!!!
『――って…あれ??あたし、生きてるっ…?!』
周りをキョロキョロと見回すと、どうやらそこは海岸らしい。
服がビショ濡れなことから、さっき海に落ちたのは間違いない。
あたしはベタな方法だが、自分の頬をつまんで痛いか確認した。
『………痛い…??いや、痛くないな…じゃああたしってば死んで――』
まだ言い終わらない内に嵐があたしの反対側の頬をギュッとつねる。