見えない異変
それと、もう一つ不思議なことがあった。

あの日、美帆がいなった日、私は自分の腕を撮影した。

それに、救急車を呼んだし、その後は警察も来た。

けれど、それら全ての行動や出来事が“なかったこと”になっていた。

スマホの画像フォルダに腕の写真はなかったし、質問サイトにもそういう形跡一つなかった。

母の話では、私が倒れているのを見つけてくれたのは同じマンションに住む大学の友人だった。

そして、その人が救急車を呼んでくれた。

私の電話の履歴も私が救急車を呼んでないことは証明していた。

あの日の出来事と美帆の存在だけが、すっぽりこの世界から消えてしまったようだった。

それ以外は今までの寸分違わず同じだった。

本当に幻覚だったのかもしれない。

私は段々とそう思い始めていた。
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