On Your Mark
大きなため息をついて見上げるが、上は相変わらず真っ暗で何も見えやしなかった。



真っ暗な世界。



その世界に二つしかない国が戦争をし、互いに人を殺し合っている。



学校で教えられるのは学問ではなく、銃の撃ちかたであり、歴史は戦争以外なかった。



授かった体力や知識は自分のために使えるのではなく、国のために使わなければいけない。



そういったことが当り前の世界。



この時代に生まれてきたとき、僕たちは一個人としてではなく、国の一部なのだ。



「それが運命」だと、誰かが偉そうに言っていた。



運命?



僕は運命など信じたくなかった。

自分の道は自分が切り開き、選ぶ。

それは運命ではない。


「あれ?」


通信塔からの帰り道ついでに、夕飯と風呂に使う水を川で汲もうとしたときだった。

砂利で埋まった脇道に、白いワンピースのような服を纏った人が倒れていた。
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