On Your Mark
「まいったな・・・」


こんな不毛地帯にまさか人が倒れているとは思ってもみなかった。

そして、それが僕たちにとって酷く面倒くさいということは、軍の手順を踏めばなんとなく分かる。



倒れているのがペスチニアの人間だったら、救助し、措置を施さなければいけない。



逆にユーシチールの人間だったら、本部に報告し、命令が下るまで監禁しなければいけない。

その命令も、恐らくは僕が一番望んでいないものだろう・・・



頭を掻きながら近付いていくと、色白い肌と今にも折れてしまいそうな細い足首と手首から女の子ということが分かった。


「おい、大丈夫か?」


一歩分ほど距離を置いて声を掛けるが、全く返事もなければ反応もなかった。

体を見渡してみても荷物のようなものを持っておらず、恰好もワンピース一枚だけ纏っている以外は靴すら履いていなかった


「ちょっと、ごめんよ」


先程と同様に反応は何も返ってこず、僕は右耳の裏側を確認した。

女の子ということで多少は鼓動が速くなったが、次の瞬間にそれは激しくなった。
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