On Your Mark
女の子はゆっくりと目を開け、僕たちが視界に入るとすぐさま怯え出した。

無理もないだろう、こんな世界で男三人に囲まれているような状況だ。


「大丈夫だよ、ほらっ」


イビルが優しく話し掛け、掌の上をゆっくりと撫でた。


「そうだぜ、おらっ」


レイも続いて手を撫でた。


「いや、レイがやると怪しまれるよ」


「おい、それはないだろ」


「ツバサもそう思うだろ?」


「お前ら、少しは気を使えよ」


ついつい、いつもの掛け合いになってしまったが、そのとき女の子は僅かながらも笑顔になった。

その表情に僕は思わず見とれてしまい、体を支えている手にぎゅっと力が籠った。

ほんのニ・三秒ほどでまた気を失ってしまったが、僕には何時間もの長い時間に感じられた。


「ツバサ?」


イビルが不思議そうな表情でこちらを見つめてきたので、慌てて正気に戻る。

僕は何事もなかったかのように、表情で「何?」と答えた。


「とりあえず、この子を運ぼう。

ツバサはそのまま体を持ってあげて、僕は足を支えるから」


「じゃあ、俺は頭を持てばいいんだな」


「レイが持ったら却って辛くなるよ」


「じゃあ、どうすればいいんだよ」


「敵襲にでも備えておいてよ」


レイは不満ながらも、銃を構えながら僕たちを先導してくれた。

もちろん、その手付きと足取りは慣れていないためぎこちなかった。
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