心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「…」

あまりにあっさりと、視線を戻されたから、

俺は結構…ショックを受けてしまった。


(そりゃあ〜笑顔とかは、期待してないけどさ)

俺は席に戻るまでの途中、ずっと片桐の顔を見てしまった。

席についてしまうと、片桐の席は後ろだから、

振り返って見つめる訳にはいかない。


顔を伏せた為に、強調される長い睫毛。

その奥にある瞳の色に気付いた時、

俺は…片桐に背を向けて座りながら、

首を捻った。

(何だ…この気持ちは)


俺の胸に、切なく…やるせなく…そして、

深い悲しみが浮かんだ。

(どうしてだ?)

頭は綺麗と認識しているのに、

胸の奥は深い悲しみで覆われていた。

自分の体なのに、その理由がわからなかった。
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