心の裏側と素肌の境界線を越える為に
だけど…。


「行くしかないだろ!」

俺は、自転車を立ちこぎしだした。


店の前を通るのは、一瞬である。

それに、反対側の歩道を走れば、気づかれない。



そう…気づかれない。




なのに、俺は…。


店の前を通った。


開店したばかりなのに、店の中に客はいた。


客が座るカウンターの向こうに、彼女だった人はいた。


一瞬だったけど、俺の目は確認していた。



唇の色が違う。


一瞬なのに、俺は…俺が知る彼女との違いに気付いた。

派手な色だから、彼女の顔の中で浮いていた。

(結婚したという…男の趣味か…)

前の方が、似合っていたのに。
< 51 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop