心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「あまり、暗くならないでよ」

麻衣は苦笑し、

「離婚に関しては…納得してるんだから…」

「ああ…」

何て反応していいか…僕にはわからなかった。

言葉を選べずにいると、

二人の間に割って入るように、ドアが開いた。


「麻衣!大丈夫?」

藤本だ。

「酔ったんじゃないの?」

藤本の言葉に、麻衣は手を振り、否定した。

(酔ってたのか…)

その酔ってたという…言葉が、さっきまでの二人の会話を否定した。

(だけど…)

藤本に連れられて片桐が、店の内に入ったのを確認すると、

僕は…ゆっくりと確かだったことだけを、指先で確かめた。
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