婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「小森っさんっ!」

外に出た瞬間、後ろから呼び止められる。

振り向くと葛城匠と柄の悪い連れがニヤニヤと笑いながら立っていた。

「なによ」思いっきり仏頂面で私は振り向いた。

「帰るんだったら送るよ」葛城はニッコリと微笑んだ。

本当に食えない男だ。私は怪訝な表情で一瞥すると、無視してスタスタ駅に向かって歩き始める。

空気を読んだのか「じゃあ、匠頑張れよー」と言って二人の連れは帰っていった。

「向こうでタクシーを拾おうか」ついてくるのが当然のごとく葛城は言う。

「結構です!電車で帰れますから」

「あ?もしかして怒ってる?」葛城は側まで歩み寄り私の顔を覗き込んだ。

「当然です」私はピシャリと言い返した。

「葛城さん、貴方が本当に私の婚約者だと言うのなら、もっと敬意をもって接して欲しかったです」

葛城は一瞬ポカンとした表情を浮かべ、次の瞬間クスクス笑いだした。

完全に馬鹿にしているようだ。

「悪かったね、小森さん。悪い虫がつかないようにするにはやっぱり最初が肝心だからね」

「はぁ?」意味が解らず私は眉根を寄せる。

「お詫びに食事でもご馳走するよ。食べそびれちゃったでしょ」

「いえ、結構です」

「何が食べたい?中華?お肉?和食?」

丁重にお断りしたが、葛城は全く聞いていない。私の手を引くと、大通りに出て慣れた様子でタクシーを拾う。

「はい、乗って」促されるままにタクシーの後部座席へ押し込められた。



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