婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「で、何にするか決まった?」

「…うどん」私がボソリと呟くと、葛城は何故か可笑しそうに笑いだす。

「オッケーうどんね」と言って、運転主に行き先を告げる。

もう、完全にこの人のペースだ。私は抵抗するのを諦めた。


六本木の交差点の手前でタクシーが停まる。

「ごめん、美味しいうどん屋さんって俺あまり知らなくて」

申し訳なさそうに言うと、有名な某うどん屋さんに連れて行ってくれた。

店に入ると、座敷の個室に通される。私達は向かいあって席についた。

「うーん、何にしようかなー」興味深そうにメニューを覗きこむ葛城を正面からマジマジと見つめた。

髪の毛から爪の先まで手入れが行き届いている。

シンプルだけど私ですら上質なものだと一目でわかるほど高そうな服を身にまとい、腕には高そうなごつい腕時計がキラリと光る。

だが、どれも浮いているものは一つもなく、しっくり彼に馴染んでいるのだ。きっと小さな頃から当たり前のように一流品に囲まれていたのだろう。

柔らかな物腰も育ちのよさを感じる。相当強引なんだけどね。

葛城を見ていると昔の華族はこんな感じだったのかな、と思ってしまう。

冴えない自分がこんな人の婚約者っていうのが、何だか恐れ多い気がしてきた。
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