婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
私は頭をあげて葛城夫妻を見据える。

一瞬、緊迫した空気が流れた。

「勉強は大好きです」

私は口元をニヤリと緩めた。

「へ?」夫妻はポカンとして聞き返す。

「受験が終わって、何処か物足りない日々を送っていました。俗に言うバーンアウト症候群ってヤツでしょうか」

楽しい、けど何処か虚しさを覚える日々を思い、物憂げな表情を浮かべる。

「だったら、大学の勉強しろよ」葛城にすかさず、突っ込まれた。

「してますよ。だけど、こうイマイチ緊迫感がないというか、必然性に迫られている感覚が足りなくて」

ドMだな、と葛城がボソリ呟いた。

「私、やります!勉強!寧ろ此方からお願いしたいくらいです!」

「そうか!やる気になってくれるのか!」

私と葛城父は熱血バレー部員とそのコーチの如く、ガッチリ手を取り合った。

「じゃあ、いつからうちに来れそうかな?」

「…は?」言っている意味が解らず聞き返す。

「勉強の度に毎回ここ迄来るのは大変だろう。だから、少し早いが此方で生活してもらったほうが良いと考えている」

「え、いや、でも」私は急展開にオタオタしてしまう。

「うちの両親もいきなり其れでは驚いてしまうのでは…?」

さすがのパパもそんな事を許す筈がない。

「小森のお父さんには既に話してある。借金の一部を前払いする言ったら快諾してくれたよ」

「い、いつの間に?!」私はギョッとして聞き返す。

葛城父は答える代わりにニッコリ微笑んだ。

この自然と人が従ってしまう絶対的なゴリ押しスマイルは葛城さんにソックリ…。

いや、違う…葛城さんが父親に似たんだ。
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