婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「あんたの器量じゃ、逆立ちしたって葛城家ほどの家には嫁げないわよ」悔しいが、確かにその通りだ。

「だけど私は名家に嫁ぎたい訳じゃないもの」

「それに!匠さんてすっごく素敵な人じゃなーい。ママが後20歳若かったらお嫁にもらって欲しいくらいよ」

ママはうっとりとした目をして胸の前で手を組む。あのエレガントな外見にスッカリ騙されているようだ。

「でも、あの人ちょっと変わってるのよ」私は眉を顰めた。

「パパだって変よ。寧ろ、結婚したらみんな変だって思う所は沢山出てくるわ」

「あの人は次元が違うのよ!自分以外はきっと皆部下だと思ってる。結婚したら私設秘書みたいな扱いを受けるに決まってる」

「部下でいいじゃない!生涯賃金3億稼げる人は早々いないわよ!」ママは言った。言いきった。

「それに我が家の実状は借金まみれだから本当は遥に大学も諦めてもらおうかと思ってたの」

「う、うそっ?!」寝耳に水な情報に思わず私はギョッとして聞き返す。

「だけど、あちら側が今時大学くらい出ておいた方がいいと言って学費も負担してくれたのよ。貴方の事もよく考えてくれてるみたいだわ」

「じゃあ、この話しを断ったら私は大学中退?」

両親は揃ってコックリ頷いた。

「まあ、あちらも大学を卒業するまで待ってくれると言っているから、今すぐ、という話しでもない。ここは一つ、前向きに考えてくれないか? 」パパは私の顔色を伺いながら言う。

この話しを断れば、我が家は借金まみれだ。

私は大学中退を余儀なくされ、可愛い双子達は苦労を強いられる。

「前向きも何も、嫁に貰ってもらうしかないじゃない…」

「そうか、解ってくれるか!」両親の表情がぱあっと晴れやかになる。

「匠さんとは明日学校で会うから宜しく言っとく」

若干19歳にして、幸せの絶頂から、絶望へと突き落とされ、人生の世知辛さを知った夜だった。
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