婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「お姉ちゃん…どうしたの」

キッチンのドアから二つの影がこちらを覗いている。

振り返ると9歳になる歳の離れた双子の弟達だった。鬼のような形相をしていた私を見て怯えている。

「空良、櫂、どうしたの?こんな遅くに」

私はハッ我に返り、引きつった笑顔で取り繕う。

「おっきな声がして起きちゃったの」甘えん坊の櫂が私の腰にしがみつく。

「ごめんね、うるさくして」私は櫂の柔らかな髪をそっと撫でた。

「お姉ちゃん、パパ達と喧嘩してるの?」しっかり者の空良が心配そうに顔を曇らせた。

「ううん、違うの。今、お姉ちゃんの将来のお仕事についてお話ししてたらつい興奮しちゃっただけだから」

「お仕事の話か。おっきな声だったから喧嘩だと思ったよ」空良はホッとして柳眉を開く。

「ごめんねービックリさせちゃって」私は双子を安心させるよう、ニッコリ笑ってみせた。

「さ、明日学校なんだから早く寝なさい」ママに促されると「はーい」と言って双子達は2階の寝室へ戻っていった。

私は大きなため息をつくと、椅子にペタリと座り込む。

「で、どうすんのよ、3億円」

可愛い弟達に不憫な思いをさせる訳には行かない。

「それが、お前が嫁に来るなら、葛城家が肩代わりしてくれる、と言ってくれているんだよ」パパは僅かに口元を綻ばせる。

「私は借金の形に売られるって訳?」

「ヤーねえ、遥、もっとポジティブに考えてご覧なさい?」

「どーゆー意味よっ?!」お気楽に言うママを私はキッと睨み付けた。

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