婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
匠さんの顔からふと笑みが消えて、真剣な眼差しで私を見据える。

「遥、キスしていい?多分この状況だとそれだけじゃ済まないけど」

た、確かに…

広い家に2人っきり。そしてベッドの上で組み敷かれ、匠さんが覆いかぶさっている。

アーモンドアイにジッとみつめられると、私は何もいえずに顔を真っ赤にして黙り込んだ。

どうしていいか解らずになんだか泣きたくなってくる。

「…なんてね」

匠さんは私の頭にポンと手を置く。

「お楽しみは結婚までお預けだから」

肩を竦めて言うと、身体を起こす。

吐きそうになるくらいガッチガチに緊張していたので思わず胸を撫で下ろした。

よ、良かった…のかな?

匠さんはベッドを抜け出すとクローゼットまで歩いて行って扉を開ける。

中からラッピングされた四角い箱を取り出して来ると私に差し出した。

「お誕生日おめでとう、遥」

「そ、そんな、パーティだけでも大変だったと思うのに、プレゼントまで貰えないよ」

私は困ったように眉根を寄せた。

「俺と結婚してくれるんでしょ。だったらこれ位させてくれる?」

匠さんは柔らかな笑みを浮かべる。

「それに今更返品も出来ない」

匠さんがおどけたように言うので私はクスリと笑って、こっくり頷いた。

するりとリボンを外して包装紙を開いていく。

箱を開けて取り出すと最新型の軽量タブレットだった。

ま、まさかの電子機器…?!

何かイマイチ色気がない。

「遥パソコン持ってないでしょ。ないと不便じゃない?」

「あ、ありがとう、大切にするね!ググってみたり、映画とか見る!」

あんまり電子機器に興味がない私はイマイチぎこちない悦びになってしまう。

でも匠さんが得意気にドヤ顔しているから、ま、いっか。

「気に入った?」

もちろん!といってタブレットを握りしめながら私はニッコリ笑う。
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