婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「それで、ご注文でしょうか?」私は営業スマイルでニッコリ笑う。

「ああ、そうそう、アイスコーヒーと豆乳ラテのアイス」葛城がオーダーする。

「抹茶シフォンも頼みたいわ」

「あれ?ダイエット中じゃなかったっけ?」

「いいんだもん」と言って、絵梨は唇を尖らせる。

なんだか、一々イチャつき感が出てイラっとする。

あ、いや、別に嫉妬とかじゃなくって世間一般的な感想としてよ?

「じゃあ、抹茶シフォンもお願い」

「畏まりました」一礼して葛城達の席から離れるとカウンターへ戻る。

キッチンへ行くと先ほど取ったオーダーを伝える。

「おい、ツチノコ妹!」藤原氏に呼び止められる。

「3番テーブルのオーダーお願い」

「はい、バッシング(後片付け)ですね」

「いや、オーダーだ」トンチンカンな事を言ってるので藤原氏は怪訝な表情をしている。

突然、ニュッと私の左頬をつまんだ。

「笑え」

「へ?」意味が解らず私は聞き返す。

「なんでそんな泣きそうな顔してんだ?何か言われたのか?」

「いや… 別になんもないです」藤原氏の大きな瞳に見つめられると心の中を見透かされそうで思わず顔を背ける。

「さしずめ、さっきオーダーを取りに行ったカップルの男の方が、憧れの先輩かなんかだったんじゃねぇか?」

「そんなんじゃないですよ」ってゆうか婚約者です、と言ったら藤原氏でも驚くだろう。

「いい男っぽいもんなぁ!いいな!青春だなぁ!」藤原氏は頭をグシャグシャ撫でる。

「まぁ、先輩のテーブルはツチノコ姉に担当してもらうから、お前は3番テーブル行って来い」

藤原氏は無神経そうに見えて、意外と人の機微に聡いところもあるようだ。

「ありがとうございます」私はペコリと頭を下げた。
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