初恋　二度目の恋…最後の恋
「じゃ、決まり。蒼空は食べるだろ」


　折戸さんは私には食べるかどうか聞いたけど、小林さんは食べるのが前提。でも、その折戸さんの言葉に小林さんは笑ったので、折戸さんのいうのは間違いではなかったらしい。


　私はシングルだけど、小林さんはダブル。


　そんな私たちを見ながら折戸さんは笑っている。折戸さん自身はデザートは食べないようだった。アイスクリームを食べ終わると、折戸さんに誘われて海岸に降りることにした。砂浜には木でデッキが遠くまで続いている。ここは散歩するのにちょうどいい。


　でも、小林さんは散歩の気分ではなかったようだった。


「ちょっと走ろう」


　そんな言葉と共に、小林さんは私の手首を掴むと走り出したのだった。身構えてなかった私は小林さんに手を引かれて走る。


　手を引かれながら走って、少し行ったところで振り返ると折戸さんが綺麗な笑顔を浮かべて手を振っているのが見えた。私も走るよりは折戸さんと一緒にゆっくりの方がいい。大学の時から研究ばかりで陽の下をこんな風に走るのは初めてだし…小林さんのスピードは加減をしてくれているのかもしれないけど、とにかく速い。


「小林さん。速いです。転んじゃいます」


「大丈夫。俺が絶対に離さないし。でも、たまには走ると気持ちがいいでしょ」


　気持ちいいとかいうレベルに私はない。余りの勢いに何も考えることが出来なかった。そんな私が零した言葉がただ一言。


「キツいです」
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