初恋 二度目の恋…最後の恋
「坂上さんは若いのに運動不足じゃない?」


 確かに運動不足だと思う。だけど、いきなり走ったら筋肉痛になってしまいそう。手を引かれて走るのはキツくて堪らないのに、キツいと言った私の言葉で小林さんは少しだけスピードを緩めてくれる。


 それでも、私には速い。足が縺れそうになる私とは違って、小林さんの足取りは軽かった。小林さんの止まったのは浜辺のずっと先。後ろの方にゆっくりと歩いてくる折戸さんが見える。



「格好いいな」

「えっ」


「折戸さんだよ。男の俺から見ても格好いいと思うから女の子の坂上さんから見たらドキッとしたりしないの?」


 仕事をする姿が格好いいと思ったりもするけど、それは小林さんが言っている意味とは違う。それよりもいっぱい走って、息が切れて心臓がドキドキというよりはバクバク言っている。


「折戸さんは格好いいと思いますが、それよりも今は走りすぎて心臓が壊れそうです」


 私がそう言うと小林さんはニッコリと笑っていた。息が切れる私とは反対に小林さんは走って気持ちよさそうだった。運動が好きなんだと分かる。


「これから俺も坂上ちゃんって呼ぶことにする。いい?」


「別にいいですが、呼び方が変わって何か意味がありますか?」


「ちょっとだけ仲良くなったと思わない?俺たち」


 眩しい笑顔を見せる小林さんに私が頷くと優しい声が私を呼ぶ。


「坂上ちゃん。これからもよろしく」


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