初恋 二度目の恋…最後の恋
 車に乗り込むと、窓からはさっきまで遊んでいた浜辺が見える。それを見ていると帰るのが少しだけ寂しくなる。そんな思いで見つめていると不意に前から声がした。


「まだ遊び足りない?」

 前を見ると、折戸さんも小林さんも私を見つめていて、その優しい微笑みに私も微笑み返す。


「十分です。こんなに遊んだのは小学生くらいぶりかもしれません」


「小学生なら随分前だね。じゃあ、坂上ちゃん。車を動かすよ。また今度遊びに来たらいい。次は泳いでも大丈夫だよ」


 折戸さんは私を小さな子どものように扱う。年齢的には大人なのに今日の私は背伸び出来ない気がする。 

「泳がないけどまた来たいです」


「俺は絶対に泳ぐ。坂上ちゃん。一緒に泳ごうよ」


「蒼空。お前も26歳になるんだから、もう少し落ち着けよ」


 この時、初めて私は小林さんの年齢を知った。仕事の様子からは年上だとは思っていた。だけど、実際には若く見えて、私服の今は大学生のようにさえ見える。


 私にとっては年齢不詳な人。大人なのに子どものような無邪気さを持ち合わせている人。


「高見主任と折戸さんがいるうちは甘えます」


 ニッコリと笑いながら断言する小林さんは強者だと思う。だけど、二人を心から信頼しているからこその言葉で…。人と極力関わらないようにしてきた私には笑顔が眩しくて、私は小林さんのようにはなれないと思った。

 
「甘えるのと落ち着くのは違うだろ」


「分かってます。でも、一緒に居る間は甘えます」

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