初恋 二度目の恋…最後の恋
 折戸さんの言葉にそう言って小林さんはこの日一番の笑顔を向ける。多分、小林さん自身が一番よく分かっているのだろう。営業課には転勤が当たり前のようにある。特に営業一課は本社の中でもエリートが集まるところ。そんな彼らの転勤先は国内だけでなく国外も当たり前。


 でも、高見主任と折戸さんの居ない営業一課なんて想像できない。



 私はそんなことを考えながら、窓の外の流れる景色を見つめていた。さっきまで明るく眩しかったのに、時間が経つにしたがって辺りは暗くなっていく。まだ、完全に日が沈んだわけじゃないのに、太陽が沈みかけたこの時間がいつも以上に寂しく感じる。


 楽しかった一日の終わりを告げているようだった。


 研究所から本社営業一課に来て不安だった私が今はこうして同僚である折戸さんと小林さんと一緒に海までドライブに来ている。営業一課に来る前の私では想像できないこの状況は少しだけ成長しているのかもしれない。


 折戸さんと小林さんのことをもっと知りたいと思う。


 恋とか愛とかそんな色めいたものではなく、人に興味を持ったのは初めてだった。


「そう言えば、高見主任のマンションってこの辺ですよね。みんなで押しかけませんか?」


 海を離れ、しばらく車を走らせ都心の方に戻ってくると、小林さんは窓からの景色をみながら驚くようなことを言う。小林さんの言葉に折戸さんは息を呑み。私は何を言っているんだろうと思った。

 
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