初恋 二度目の恋…最後の恋
 棚に入っているネイビーのタオルを一枚取ると、私は自分の足にそれを当てる。フカフカのタオルが足についている水滴を吸い取っていく。足を拭くとまた一段とスッキリする。使ったタオルを洗濯物を入れると思われるプラスチックの籠に畳んで入れるとちょうど小林さんも足を洗い終わって出てきたのだった。


「洗うとさっぱりした。坂上ちゃんも気持ちよかった?」


「はい」


 小林さんも私が取った棚の上からタオルを取って足を拭くと私が畳んでいれた籠の中にくるくるっと丸めて投げ込むとバスルームのドアを開けて真っ直ぐにリビングの方に歩いていく。私はその後を付いていくことにした。


 廊下の向こうにガラスのドアがあって…そこの奥に部屋が広がっている。


 小林さんは躊躇することなくそのドアを開けると、ソファに座っている高見主任と折戸さんの視線が小林さんと私に注がれる。


 ガラス越しに見えた高見主任と折戸さんは真剣な表情を一瞬で消え、いつもの朗らかな表情を浮かべている。大事な話をしていたのだろうかと思ったけど、私と小林さんには聞かせたくない言葉だったのだろう。


 高見主任はスッとソファから立ち上がると、キッチンの方に行く。冷蔵庫のドアを開けながら優しい声を響かせたのだった。


「お茶にするのか?それともビールがいいのか?」


 小林さんは私の顔をチラッと見てから、またニッコリと微笑む。


「俺、ビールがいいです。」


「本当に遠慮のないやつだな。でも、蒼空らしくていいな。坂上さんもビールにする?」

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