初恋 二度目の恋…最後の恋
「で、三人は何しに来たんだ?」


 高見主任の言葉にリビングの穏やかな空気が少しだけ冷える。何をしにきたのかと言われると…何と言ったらいいのだろう。折戸さんは素知らぬ顔でビールを飲んでいる。


「サプライズです。いきなり、坂上ちゃんがインターフォン鳴らしたから驚いたでしょ」


 小林さんは胸を張ってそういうと、折戸さんがプッと噴出して笑う。確かに、サプライズで行こうと言ったけど、いきなり言われた高見主任はどう思うだろうか?


「確かに驚いたけど、蒼空の髪が見えてたし、もし本当に坂上さんが一人で来ていたらここには入れないよ。
 近くのカフェで話は聞くよ」


「高見主任らしいですね。」


 折戸さんは手に持つビールを口に付けながらそう呟く。私には何がらしいのかさえわからない。


「当たり前だろ。うちの大事な坂上さんに要らない噂が立つと悪いからね」


 私は折戸さんと高見主任の言葉を聞きながら少し胸が熱くなる。『大事な坂上さん』という言葉は本当に優しい。ずっと思ってたのは研究所から来た私は仕事の面では本当に何も分からない。何度かの同行で少しは営業のことも分かってきたけど、それも障りの部分だけ。


 でも、高見主任の言葉には私を本社営業一課の仲間だと認めてくれている。そう思ってくれたことが嬉しい。


「でも、俺が女なら高見主任との噂なら大歓迎だけど。」

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