初恋 二度目の恋…最後の恋

「凄いですね」

「何が？」


「料理のスピードもだけど、盛り付けも綺麗だし、それに美味しそう。でも、なんでこんなに手際がいいのですか？」


　手の込んだ料理を作るのも華麗な包丁さばきがあって、細かく千切りを始め、飾り切りなんかもするから、料理に綺麗という花を添える。


「大学の時にずっと小料理屋でバイトしていたから、その時に色々習った。小料理屋なのに多国籍料理を出す店だったから和風から洋風イタリアンでも何でも作ってた。だから、冷蔵庫である材料を使って適当に色々作るんだよ」


　本社営業一課で働く社員も大学時代はあるわけで、バイトしているのも当たり前。でも、こんなに手の込んだ料理を苦にせず出来るのはやはり折戸さんの器用さからきている。バイトをしていたから出来るのではなく、折戸さんの器用さがあってこそ出来る所業。


　そう思うと妙に納得してしまった。


　私がキッチンとテーブルを行き来すると、テーブルの上には折戸さんの作った料理が並んでいく。そして、ある程度作り終えたら折戸さんは戻ってきた。


「さあ、このくらい足りるでしょう。」


　食材提供は高見主任で料理は折戸さんという夕食が始まる。崩すのが勿体ないくらいの盛り付けに箸を入れるのを躊躇していると、折戸さんがクスクス笑い、冷蔵庫から持ってきた新しいビールのプルタブに指を掛ける。


「美羽ちゃん。早く食べないと蒼空に全部持っていかれるよ」