初恋 二度目の恋…最後の恋
「美味しいよ。オーストラリアは嫌いじゃないが、やっぱり日本がいい」


「お茶の方が良かったですか?」

「いや、コーヒーの方が助かる。眠気が覚める」


 そういうと、高見主任は仕事をいつものように始めたのだった。高見主任が戻ってきたことで営業室に空いていた穴が塞がっていくように感じるのは私だけではないだろう。何をしてくれるというのではないけど、高見主任が営業室にいるだけでホッとしてしまうのは…。


 高見主任の存在が大きいからだろう。



 私が事務処理を終わらせていると、不意に高見主任が私に声を掛ける。



「坂上さん。今、メールに気付いたけど、来週の水曜日に静岡研究所から中垣が来る。確か一緒に研究していたんだよな」


 中垣先輩―。


 東京北営業所でずっと一緒の研究チームだった。静岡に転属してからは会ってない。たまに心配するようなメールが届くだけ。一緒に居るときは分からなかった優しさを感じたのは私が本社に転属してからだった。


「中垣先輩とは一緒に研究をしてました。 大学の時からです。」


「それは長いな。何でも、今回の研究がある程度成果が上がりそうなので、本社に報告に来るらしい。営業一課からは成果発表に私と折戸が出るが、坂上さんも一緒に来るか?」


「いいんですか?」


「ああ。専門的な視点から見て貰えると助かる」


 中垣先輩に会うのは久しぶり。


 上がった成果というのも気になる。あの時の研究の成果が上がるには先輩が必死に努力した結果だろう。


「よろしくお願いします。」


 
< 152 / 303 >

この作品をシェア

pagetop