初恋 二度目の恋…最後の恋
 高見主任から聞いたのは中垣先輩が本社に来るのは来週の水曜日ということだった。本社で営業部長を始め、各課の課長に主任が一堂に会しての成果発表会というのはかなり大がかりなものだった。その規模を聞くだけで、今後の社の命運を動かすほどの研究成果なのかもしれない。


 あの中途半端で終わった私の研究を中垣先輩が形にしてくれている。その結果が楽しみなのと、その反面、自分の手で出来なったことへの思いもある。


 今日は静岡の研究所から中垣先輩が来る日。私は朝から少しの落ち着かなさを感じていた。会議が始まるのは午後の二時。営業室で書類の整理をしていた私の前に現れたのは久しぶりに見る中垣先輩の姿だった。まさか中垣先輩の方から会いに来てくれるとは思いもしなかった。


 白衣以外を見たことない中垣先輩も今日はグレーのスーツを着込んでいて知性的な光を放つ。研究室にいる時の何日も仮眠室で生活していた中垣先輩の姿はない。


「坂上。久しぶりだな。元気にしていたか?」


 中垣先輩の声は私には懐かしかった。まだ、昼を過ぎたくらいだから、成果発表会の始まる二時にはまだ時間がある。その前に私に会いに来てくれたのだろう。そんな優しさが嬉しい。一緒に居た時は分からなかった優しさだった。


「お久しぶりです。先輩は元気でしたか?この度は研究の成果の発表ですよね。おめでとうございます」


「ああ。ありがとう。その件で話があるんだ。会議が終わってから時間があるか?」

「はい。定時が終わってからなら大丈夫です」


「じゃあ、終わったら連絡する」

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