初恋 二度目の恋…最後の恋
 一課の営業員は徐々に自分の仕事に区切りをつけていく。そして、それを見計らったように高見主任は私を伴って前に出るとさっきと同じように穏やかな声を出した。穏やかな声なのに…その声に反応するかのように営業室内の音が急に静かになる。ファックスの吐き出される音が自棄に響く。


「東京北研究所から配属されてきた坂上美羽さんです。しばらくは一課の営業補助をして貰うことになっている。落ち着いたら坂上さんは専門的な商品内容についてのバックアップをして貰うことになるだろう」


「「はい」」


「坂上さん。挨拶を」


 練習の成果を発揮する時が来た。でも、男に人の視線をこんなに浴びたことのない私は…コチコチに緊張してしまって…


「坂上美羽です。よろしくお願いします」


 たったこれだけしか…言えなかった。

 
 
「ではこのまま朝礼に入る。坂上さんは一番後ろの右の席に座って。」


「はい。」


 私が返事をしてから席に座ると、転属第一日目の朝礼が始まった。


 営業一課には主任の他に四人の男の人がいる。その誰もが柔和な表情の中に鋭さを隠し持っているような気がしてならない。特に高見主任の鋭い剣は切られたことさえわからないくらいの精巧さを持っているような気がした。


 主任が簡単に紹介してくれたのは、柴田さん。北井さん。折戸さん。小林さん。


 一度聞いただけでは覚えることなんか出来ない。

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