初恋 二度目の恋…最後の恋
 正直困った。


 朝礼で主任が話している内容のほとんどが理解できないなんて致命的だと思う。私は経済の専門用語が全く分からない。思いっきり理系の私には経済学は中学レベルで止まっている。世界の情勢に疎いのも致命的だった。新聞は読んでいるものの、それでは足りないと痛感する。


 完全に勉強不足だった。



 営業一課は内外共に営業を掛けているから経済的な知識は必要になる。でも、まさか高見主任の言っている言葉の意味を全く理解できないとは思わなかった。研究所という狭い世界にいたのをたった朝礼だけで感じてしまっていた。


 辛うじて分かるのは与えられている個人の目標が大きいということ。
 その達成のために必死に仕事をしているということ。


「それでは今日も一日、頑張ろう」


 そんな言葉で締めくくられた高見主任の話が終わると、皆、いきなり立ち上がった。さっきまで、電話やファックス、コピー機がフル稼働していたのに、急に静かになっていく。



 皆が居なくなった営業室に残された私はただ呆然としていた。残されたって感じが否めない。そんな私を見ながら高見主任は穏やかな微笑を浮かべて彼自身も立ち上がった。


「いつもはもう少し皆、営業室にいるのだけど、今日は月締めなので最後の追い込みに掛けているんだ」


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