初恋 二度目の恋…最後の恋
 それからも中垣先輩からのメールにはいつも報告書が添付されることになった。その数値をみて、今の私がどうすることも出来ないのに、精密な報告書は届けられる。


 あの食事をした日、きっと中垣先輩は私の心の中に研究に対しての未練を感じたのだろう。普段は何も思わないのに、中垣先輩と話をしていると自分の中から溢れる研究への思いがあった。それを感じたからこそ、こんな風に報告書を送ってきてくれるのだろう。私がいつでも研究所に戻れるようにとの先輩の配慮。


 報告書を読む度に、研究という仕事に感じる未練が溢れていた。



 それから、季節は本格的な夏を迎えた。


 今年の夏は暑い。夏の日差しはとても眩しくて、今までは研究所の中にいたから夏の眩しい日差しなんか感じなかったけど、営業一課に転属して、みんなの営業先に同行しているとその暑さを肌に感じる。チリチリと焦げるような暑さに私も額に汗を浮かべる。


 でも、一緒に同行する人はスーツを着ているから、私よりもずっと暑そうだった。キッチリと締められたネクタイが暑そうに見える。

 
 そんな中、高見主任と折戸さんは暑さを感じさせない。同じようにスーツを着込み、ネクタイも締めているのに、涼やかな顔をしている。それに比べて小林さんはプールにでも入ってきたのではないかと思うくらいに汗だくだった。


 それでも気持ちよさそうに小さなタオルで汗を拭く姿は爽やかさを醸し出している。

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