初恋 二度目の恋…最後の恋
 お医者様の言葉が病室に響くと、思い出が駆け巡る。お祖母ちゃんの思い出は多すぎて私の心から溢れてくる。幼き時からずっと一緒にいたお祖母ちゃんは私の元を永遠に去っていった。もうあの優しい声を聞くことも温かさにも触れることが出来ないと思うと苦しい。


 心に大きな穴を開いた気がした。


 お母さんはそのままベッドに身を投げて、泣きだし、私はその姿を何かドラマでも見ているかのように静かに見ている。苦しいのに、悲しいのに…現実として受け止められない。もうお祖母ちゃんの優しい声が聞けないなんて信じられなかった。
 

 処置をするというので病室から出るように言われた。よろよろと立ち上がるお母さんを支えて病室から出るとそこには息を切ったお父さんも来ていた。


「美月」


 お父さんは泣き崩れるお母さんを抱き寄せた。お母さんはお父さんが来たことで気持ちが緩んだのか声を出して泣き出したのだった。お父さんが来たことで、私は少しだけホッとしていて、ホッとしたと同時に足元が揺れた。


「坂上さん。すみませんが、手続きをお願いします」


「はい。では、こちらにどうぞ」


 両親は手続きに行ってしまい、私は廊下に一人残される。病室に入ることも出来ずに病室の前で呆然と立ち尽くす私は視線を感じた。私は廊下にいる小林さんに気付く。あれからかなりの時間が経つが、まだいてくれているとは思わなかった。


 その手には私のバッグも持たれたままだった。


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