初恋 二度目の恋…最後の恋
 肩越しに見える陽に焼けた額に流れる汗をもう一度拭い、顔も拭う。そんな彼の顔を一瞬だけカメラが映した。時間にして一秒くらい。その一瞬の真摯な顔に視線を囚われる。


 その精悍な顔に私は恋をした。
 恋というよりは憧れという方が当たっているかもしれない。でも、私の心臓はドキッと飛び跳ねたのは嘘じゃない。


 自分を押し殺して受験に向かう私はまだ高校一年だった。


 私の通う高校は有名な進学校で一年でも夏休みは存在しない。部活もとりあえずあるというような感じで、さほどの熱心さもない。勉強だけの時間を過ごすことを少しも違和感を覚えずにいた私はテレビの画面に吸い寄せられていた。


 あんなに汗を流しながら自分を昇華するということはどんななのだろうか?


 毎日が流れるように過ぎていく中で、ふと目にしたのは高校野球のテレビ中継。そこで繰り広げられていたのは言葉のとおりの『熱闘』だった。


 私は学校の補講が終わって、塾に行く前の少しの時間の出来事。


 今でも忘れることが出来ない。
 

 今まで恋なんかしたことない私が初めて淡い思いを抱いたのはテレビの中。芸能人のアイドルに奇声を上げるクラスメートをほとんど変わらない。そんな自分も居たのだと思ったものだった。




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