初恋 二度目の恋…最後の恋
 あれから八年の月日が流れていた。

 
 心の奥底に彼の顔が微かに残っている。でも、それも徐々に時間の経過と共におぼろげになるのを感じていた。いくらあの時眩しく思っても八年も経てば覚えている方が可笑しい。でも、眩しいと思った記憶は…消えなかった。


 私は必死に勉強した甲斐もあって優秀な成績で高校を卒業し、希望の大学に現役で推薦入学。大学生になったからと言って自分の生活は変わらず、大学での時間のほとんど全ての時間を研究室で過ごし、研究に没頭した。


 研究職に就きたいという私の希望はそんなに苦労をせずに叶えられることになったのだった。しかし恋愛の方は全く異性に興味を持てず『恋人いない歴=実年齢』の更新は続いている。


 でも、それでいいと思う私がいて、恋愛にも結婚にも興味のない今の自分に満足していた。


 就職も研究をするために大学に残るか就職するかと悩んだ挙句に、教授の推薦で今までの研究の流れを続けることの出来る会社に就職することにした。


 大学と企業の研究の融合。

 
 この就職氷河期に一流といわれる企業に就職できたのは運がいい。それも研究所での研究員として勤務出来るのは一生分の運を使い果たしたかもしれないとさえ思った。


 私は一生、研究に身を捧げる覚悟だったから、これからこれ以上の運は必要ない。


 でも、そうではなかった。

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