初恋 二度目の恋…最後の恋
「似た様なことを高見主任にも言われました。『勿体ない』って。高校までは勉強で、大学ではずっと研究だったので、折戸さんや小林さんと出掛けたのは新鮮でした。楽しかったし、もっと一日が長ければいいのにと思うこともありました。だからといっていきなり折戸さんと結婚というのも違うような気がします。言葉にするのが難しい気持ちなんです」


 私の素直な気持ちだった。


 だけど、世の中にはお見合いというのもあって、お互いに気に入れば、結婚を前提にお付き合いが始まる。恋愛はしてないものの、折戸さんとのことをお見合いと考えたら折戸さんは素敵で、申し分ない。

 
『前向きにお付き合い』ということになるのだろう。それに今日の夜も一緒に食事をすることになった。こんな時間を一緒に過ごしていれば、いつか折戸さんと結婚したいと思うのだろうか?一緒に居るのが当たり前のようになれるのだろうか?


 自分の中で答えは見つかっていない。でも、私は折戸さんとのことを一生懸命考えてから答えを出したいと思う。それは私の折戸さんへの誠意。


「俺は美羽ちゃんにフランスに行って欲しくない。まだ一緒にいたいと思っているし、一緒に仕事もしたい。それが俺の気持ち」


 小林さんは思い出したように携帯を取り出すと、ちょっと顔を歪めた。そして、私の顔を見ると名残惜しそうな顔をする。


「時間だ。行かないとアポがある」


「すみません。引き止めちゃいましたね」


「いや…あの。取りあえず行ってくる」


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