初恋 二度目の恋…最後の恋
「まだ誰も戻って来てないのか?」


 営業室に戻ってきた高見主任が私を見つめ何とも言い難い表情をしている。そんな言葉に頷くと、高見主任はフッと大きく息を吐いてから自分の席に戻ったのだった。背もたれのある椅子に座るとグッと背中を伸ばし、天井を見つめている。


「課長は居なかったのですか?」


「いや。いたが、ちょっとしたことを言われただけだったからすぐに戻れた」

 
 高見主任は静かな声を響かせる。いつもどおりの冷静な声なのに、そこに抑揚はなく淡々と言葉を紡いでいるだけに聞こえる。何かを考えているようには見えるけど、その端正な顔を歪ませるほどの懸案はなんだろう。


「まだ、戻ってないんだな。」



 さっきも聞いたのにもう一度聞いてくる。誰かに急ぐ用事でもあるのだろうか?


「はい。まだ、誰からも連絡はないです」


 私がそういうと、高見主任はもう一度と小さな溜め息を零す。自分の席に座ると額に掛かる髪をかき上げた。これは高見主任が困った時にする仕草なのに、その仕草がとても魅力的だと見とれてしまいそうになる私がいた。でも、高見主任を困らせることはなんだろう。


「坂上さんに大事な話がある。ちょっと会議室までいいかな」


 私に大事な話?


 課長の元から戻っての浮かない表情をさせていることがまさか私のことだとは思いもしなかった。それもここではなくて会議室を使ってまでの話となると…。


「はい」



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