初恋 二度目の恋…最後の恋
 折戸さんの言葉にドキッとしてしまうのは私が折戸さんを意識しているからだと思う。プロポーズしてくれて、好きだと言って貰って…本当に嬉しかった。でも、まだ答えは出せてない。折戸さんは世間話をしながら笑っていたけど、不意に小林さんに真剣な言葉を零したのだった。


「蒼空。いいのか?」


 その問いに小林さんは唇をキュッと噛み締め、膝の上で握る拳は赤く染まっている。でも、何のことを言っているのか私にはわからない。それでも、小林さんには折戸さんの意図は通じているみたい。


「よくはないです。だけど、自分には受け止めるだけの自信がない。俺は折戸さんみたいに自分に自信が持てない」


 折戸さんはそんな小林さんを優しく見つめると手に持っているグラスのビールをスッと飲み干したのだった。グラスに残った少しの泡がグラスの底に向かって流れていくのを私は見ていた。


「蒼空から見て、俺は自信満々に見えるかもしれないが、俺もいつも迷っている。今でもこれが一番良かったのかと迷う。でも迷いながらでも前に進みたいとは思う」


「折戸さんでも?」


「ああ。俺だけでなく誰でもだよ」


 そんな話をしている二人を見ていた私は視線を感じそちらの方を見るとそこには高見主任の姿があって…私と目が合うとゆっくりと手招きしている。キラキラ殺人光線を放っているので危ないとは思うけど、幹事の私は動かないといけない。そんな思いで高見主任の所に行くと私の想像以上に眩い光が私を包んだのだった。

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