初恋 二度目の恋…最後の恋
 透明の液体をどのくらい飲んだのだろうか?

 
 少し身体を傾け、透明の液体の入ったグラスをユラユラと優雅に回す。少し伏せ目がちな視線にはライトの光が反射しているのか潤んでいるように見え、爆発的な色香をそこらに漂わせている。床に危険区域のテープを貼りたいくらいの危なさだった。


「何か足りないものがありますか?」


 横に行って座ると高見主任は綺麗過ぎる微笑を浮かべて私を見つめた。営業一課に来て、何度もこのキラキラ光線を浴びているのに一向に慣れる気配はない。


「いや。そうじゃなくて。たまにはゆっくりと坂上さんと話したくてね」


 話といっても、高見主任の聡明な頭脳に値するような気の利いた話が私に出来るとは思えない。それにこのキラキラ光線を躱しながらの会話となると一気に魂を抜かれるのではないかとさえ思ってしまう。幹事という仕事は全うしないといけないけど、それはこんなにもハードルの高いミッションが含まれているのだろうか?


「私とですか?」


「ああ。もしかしたらそんなに長く一緒に働けないかと思ってね」


 静岡研究所に転勤することになると、私はここから居なくなる。高見主任は私が断らないと思っているのだろう。


「静岡に行くと思っているのですか?」



「どうだろうね。でも、坂上さんは困っている人を見過ごせないでしょ。特に研究所の人員不足は酷いからね。この時期は急な補充も難しいから今ある人数でするしかないんだよね。春になるまでは新入社員は受け入れられないから」


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