初恋 二度目の恋…最後の恋
 店の前で拾ったタクシーに乗り込み、私は小林さんと並んで私の住んでいるマンションに向かう。こうやってマンションまで送って貰うのは何度目だろう。申し訳ない気持ちもするけど、優しくされているということに心が温かくなるというのもある。


 私のマンションに向かう間、小林さんは優しかった。少し酔っているだけなのに、色々と気を使ってくれる。嬉しいけど申し訳ない。


「マンションの前でスポーツドリンクを買った方がいいよ。飲んだ後は喉が渇くから」


「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。さっきは一気に酔ってしまいましたが、たった一杯だったのでもうかなり醒めてますから」


 そうはいうけど、小林さんは引いてくれる気配はない。


「でも、女の子が酔っているのってやっぱり心配。実家なら大丈夫だと思うけど、一人でしょ」


「それはそうなんですが。申し訳ないです」


「それに、今日の美羽ちゃんは自分が思っている以上に酔っているよ。折戸さんの送別会で緊張してたんでしょ」


 それは間違いない。


 私は小林さんと一緒とはいえ、初めての幹事、それも折戸さんの送別会だったので緊張もしていたけど、優しくしてくれた人だったから最後まで楽しんで貰いたいという思いもあった。何も出来ない私だから少し気持ちが空回りしたのかもしれない。


 プレゼントを渡して、折戸さんが喜んでくれたから少しだけ気持ちが緩んだのは間違いない。

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