初恋 二度目の恋…最後の恋
「じゃあ、部屋に着いたら連絡をしますね」


「ああ」



 そう言って一歩前に踏み出した時、私の意思とは反対に足元から揺れる。まさか、こんなに足に力が入らないと思わなかった。歩けないことはないけど、気をつけないと転びそうだった。思っていた以上に酔っていたと私は自覚する。


 転んでしまう!!


 そう思った瞬間、私の身体は小林さんに抱き留められていて、手に持っていたスポーツドリンクのペットボトルはアスファルトの上を転がった。


 こんなに男の人に近付いたのは初めてだった。


 小林さんの逞しい腕に私の身体なんか簡単に支えられる。それも軽々と。ほぼ片手一本で抱き留められた身体は空に浮いているような気がした。ふわっとアルコールに混じって小林さんのコロンの香りだろうか?少し優しい香りがして、ドキッとしてしまう。


「ありがとうございます。もう大丈夫です」


「部屋の前まで送る。このままじゃ美羽ちゃんが心配で飲み会に戻っても頭の隅に美羽ちゃんがいると思う。だから俺のためにも送らせて」


 そこまで言われると私も頷くしかなかった。小林さんに申し訳ない気持ちがあるけど、それでも支えられて歩くとやはり足取りは安定する。転び落ちたスポーツドリンクを簡単に拾うと私を優しく抱きかかえるように小林さんはマンションの中に足を進めるのだった。オートロックを解除してエレベーターの中に乗り込んだ。

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