初恋 二度目の恋…最後の恋
「さてと。研究室に帰らないと怒られるかな」


 そんな呟きとともに身体を起こすと、そこには懐かしい笑顔がそこにある。私は見間違いかと思ってもう一度目を閉じて、ゆっくりと開くと、そこには優しい笑顔がそこにはある。どうしてここにいるのだろう?私が会いたいと思っていたから神様の悪戯???


 でも、悪戯でも何でもない。見間違いでも何でもない。私の会いたかった人がそこにいる。


「美羽ちゃん。久しぶり」



 そこにはスーツを小脇に抱え、ネクタイを緩めながら立つ小林さんの姿があった。無邪気な笑顔は新緑の眩しい光の中爽やかで、やっぱりこの間のコンパの男の人が霞むのは間違いない。顔も体躯も性格も小林さんの方が100倍は素敵だ。


「本当に小林さんなんですね」


「うん。俺だよ。美羽ちゃんに会いたかった。元気にしてた?」


 久しぶりに見る小林さんは眩しくて無邪気な笑顔が懐かしいと思う。小林さんに会いたかったのだと私の心臓は素直に大きな音を立てだしていた。



「小林さん。何でここに?出張ですか?」


「いや。静岡支社に転勤になった。それで高見主任から美羽ちゃんに渡してと頼まれてきたものがある。静岡支社に行く前に届けろというから先に来たんだよ」




 そうしてスーツのポケットから真っ白な封筒と取り出すとそれを私に渡してくれたのだった。


「これは?」


「俺も知らない。でも、高見主任が静岡に行ったらすぐに美羽ちゃんに届けて欲しいっていうから大事なものじゃないの?」
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