初恋 二度目の恋…最後の恋
 ちょっと私が席を離れた間に高見主任に何があったのだろうか?


 高見主任はグラスに入ったお酒をクルクル回すようにしなやかな指を動かしながら、少し潤んだ目で私の方を見つめ、視線が絡んだ瞬間ににっこりと微笑む。その瞬間…私の身体は石化したかのように固まってしまった。


 見つめられると、どうしていいかわからなくなる。折戸さんの言葉を聞いてなかったわけではないけど、こんなにも強力になるとは思いもしなかった。


 そして、眩そうに目を細めて…。


 心が粟立つような魅惑的な声を響かせる。もしも現代に光源氏が生きていたらこんな感じじゃないかと思うくらいに男の色香を無駄に振り撒いている。仕事の鬼と言われた高見主任はそこには居ない。


 ここにいるのは色香漂わす綺麗な人。視線が逸らせない…。


「主役の坂上さんは消えちゃだめだよ」


 お手洗いに行くと言いながらちょっと息抜きしたのがバレたのだろうか?でも、さっきの小林さんの話は聞いているように思えたのに。

 
 手に持つグラスの中の日本酒が水のように消えていき、口をつける度に、魅惑的に微笑みが私を包む。


「そんなに見て。欲しいならあげようか?美味しいよ」


 そういいながら私の前にグラスを傾けた。美味しいと言われても飲んだことないし、それにお酒を飲まなくても高見主任に酔ってしまいそう。


「日本酒は飲めないんです。お気持ちだけありがとうございます。」

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