初恋 二度目の恋…最後の恋
「そう?本当に美味しいのに。ビールも美味しいけど、この大吟醸のサラッとした甘さは癖になりそうだよ。いくらでも飲めそうで怖いな。でも、今日は折戸が居るからいくら飲んでも大丈夫」


 そういうと、高見主任はまた眩く微笑みグラスに口をつける。形のいい唇に少しだけ残った酒をゆっくりと舌で舐める仕草は…強烈だった。ここだけ別の空間が広がっている気がする。


「坂上ちゃんは凄いね。感心したよ。主任の毒気に当てられても動じないなんて。ウチの主任はいい男でしょ。女はみんな腰砕けになるんだけど、坂上ちゃんなら大丈夫かな」


 十分、動揺してます。
 違う意味で腰が砕けそう。


 あまりにも驚きすぎて何も言えないだけ。石化した身体はまだ上手に動く気配もない。少しだけ気持ちを落ち着けようと、ビールのジョッキに手を伸ばそうとして躊躇する。でも、とりあえずなんでもいいから喉を潤したかった。


 少し温くなったビールでも少しは役に立った。声が出る気がする。


「十分、驚いてます。格好いいのは認めますが、雲の上の人で現実味がないです。でも、前に座って飲みたくない気がします。」


 私の言葉に折戸さんはまたクスクス笑う。


「雲の上の人ね。確かに飲んでいる時の高見主任はどっか遠くに行っているよね。でも、営業室とのギャップが可愛いと俺は思うけど」


 可愛いとかは全然思えなくて、折戸さんの表現が間違いだと思う。でも、一緒に居ればいるほど主任は分からない人だ。
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