初恋　二度目の恋…最後の恋
　折戸さんはドリンクメニューを見ながら、ちらっと私を見てニッコリと笑う。そして、メニューを閉じると決まったのだろう。


「今日は坂上ちゃんの歓迎会ということで『シンデレラ』というカクテルはどうでしょう。口当たりもいいし、飲みやすいと思うけど」


　折戸さんが選んでくれたのは『シンデレラ』というカクテルだった。シンデレラなんてちょっと恥ずかしいと思うけど折戸さんが選んでくれたのだから美味しいのだろう。私はコクンと頷いた。


　折戸さんは自分のビールと一緒に私の『シンデレラ』も頼んでくれた。それからしばらくして運ばれてきたのはテレビでよく見るようなカクテルグラスにオレンジ色の液体が並々に注がれている。


　綺麗なオレンジ色は私の視線を釘づけにする。

　
　大好きなオレンジジュースのようなカクテルはどんな味がするのだろう。


「さあ、どうぞ。飲んで動けなくなったら俺が背負って帰ってやるから安心していいよ」


「それが一番危ない」


　折戸さんの言葉に高見主任がいらないことに口を挟む。高見主任は聞いてないようで人の会話は聞いている。クスクス笑いながら、揺れる瞳の輝きはさっきよりも威力を増しているように見える。


　折戸さんの視線と高見主任の視線が私の手元に注がれる。

　初めて飲むカクテルはどんな味がするのだろうか？


　私は一口飲んで驚いた。
　これは思いっきりジュース。


　口当たりのいいこんなカクテルを飲み続けたら、本当に折戸さんの背中のお世話にならないといけない。


　カクテルは奥深いと思った。

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