初恋 二度目の恋…最後の恋
 すると、折戸さんは高見主任の顔をチラッと見てから私の方を向いた。その顔は真剣そのもので私は折戸さんの勢いに後ずさる。ただ、帰るだけなのに…。


「何かあったらすぐに電話するんだよ。俺が飛んでいくから。いや、やっぱり、帰ったらメールを貰った方が安心する」

「え。」


「坂上ちゃんがメールしてくれるなら、蒼空が送るのを認める」



 私は折戸さんの過保護ぶりに小さな溜め息を吐いた。すると、小林さんは私よりも大きな溜め息を吐いてから折戸さんを見つめた。


「何もしませんよ。ただ家まで送るだけですから」


「蒼空。頼んだからな」


 言われるがままに折戸さんのメールアドレスを私の携帯に登録されて、必ずメールすることだけが条件で帰らせて貰えることになった。


「大丈夫です」


 小林さんがそう言うと高見主任が折戸さんの肩をグッと抱いた。折戸さんにまたあの物憂げな色気を孕んだ視線を向けるとキラキラ光線を発射する。


「さて、坂上さんのことは蒼空に任せて、飲みに行こうか。俺はもう少し飲みたいんだ。折戸。付き合ってくれるだろ」


「まだ飲みますか?」


「ああ。飲み足りない気がする」


 結局、折戸さんは高見主任の毒気に勝てず近くのバーで飲み直すことになり、私と小林さんは終電で近くの駅まで一緒に帰ることになった。

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