初恋 二度目の恋…最後の恋
「さあ、坂上さん。行こうか?」


 高見主任が全ての準備を終わらせて、私の横に立っていた。私が小林さんに金曜日のお礼を言おうと躊躇していた間に準備を着々と終わらせていたのだろう。


「すみません。」


 私がバッグにファイルを入れて立ち上がると小林さんは私の方を見てニッコリと笑う。



「頑張って。高見主任がいれば大丈夫だから」


 私は頭を下げてから、先に行く高見主任の後を追って走った。お礼が帰ってからいうことにしよう。そんなことを思いながら高見主任の後ろを歩いていると、急にドキドキしてきた。駐車場から社用車に乗り込み、取引先に向かう。さっきのファイルにあった名前は私も知っているほどの大企業だった。


「短い時間しかなかったけど、さっき渡した資料を読んだか?」


「はい」


「今から行く先は以前に取引のある先だが、もう一件は全くの新規だ。多分、相手が強気に出て来ると思う。今日はそう言う先の対処を学んで欲しい」



 高見主任の言葉は尤もだけど素人の私がどこまで理解出来るか自信はなかった。私は営業に関しては全くの素人だ。今からの取引先での高見主任の営業を見て、少しでも営業の感覚を得られればと思い、必死だった。


 その必死さが空回りして極度の緊張を増す。心臓はドキドキを通り越して…バクバクと苦しい。


 そんな私に高見主任は優しい言葉を告げた。
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