初恋 二度目の恋…最後の恋
「お待たせしました。高見さん。」



 恰幅のいい男の人は高見主任に好意的な微笑みを浮かべ入ってくる。高見主任は優雅に立ち上がると相手に深々と頭を下げた。私も一緒に立ち上がって、並んで頭を下げる。高見主任の営業はどんなのなのだろう。そう思うとドキドキが止まらない。


「今日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました」


「いえいえ。お宅の新商品はなかなかいいとの噂ですので、楽しみにしていたんですよ」


「我が社の自信作ですので、社長にも気に入って貰えると思います」


 そう言って開いたパンフレットに載っている商売を見て私は息を呑んだ。まさか、高見主任がこの商品を営業に来ていたとは思いもしなかった。パンフレットにあるのはつい先月に東京北研究所で出来上がったもので、私と中垣先輩とが中心になって開発したもの。私の頭の中にはまだデータがこと細かに蓄積されている。


 そのデータは…。パンフレットには載ってない企業秘密に関する部分だった。


 驚いた私が高見主任の方を見ると、ニヤリと笑う。このことを見越して…高見主任は私をここに連れてきているのだと思った。高見主任が説明する部分の正誤が私になら分かる。



「では説明させて頂きます。」


 静かな応接室には高見主任の涼やかな声が響く。言葉は自信に満ち溢れ…。完璧なる知識を披露する。研究した私たちくらいしか気にも止めないような事柄までも細かに丁寧に分かりやすく説明をしていく。研究所から上がってくる資料を何度も目を通したのだろう。そうじゃないとこの説明をすることは出来ない。

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